| 2年前まで暮らしていた山口市から、友人がやって来た。
「せっかくだから、お好み焼きが食べたい」という彼女。
本場・広島で、おいしい店に出会ったことがないという。
なんてこと! 名誉ばん回しなければ。
夜の
10 時すぎ。場所は広島市中心の並木通り近く。
「近くで、お勧めは?」
「それじゃあ」と案内したのが、中町の「よっくん」だ。
立地が良くて、良心的。しかも、閉店時間が遅くて重宝なのだ。
さらに、うどんが美味。だから、貴重な店なんよ。
「なぜならば……」と、歩きながらレクチャー。
広島風は、肉玉プラスそばかうどんが基本だけれど、
客の大多数は「そば派」で、回転率の劣るうどんの質は落ちがち。
だから、うどんのいい店は、それだけ食材に気を配っているといえる。
当然ながら、そばも、ほかのメニューも味がいい。
「そばがおいしい店は、うどんもうまい」とは言えないが、
「うどんがおいしい店は、そばもうまい」と思う。
広島風のお好み焼きに対する彼女の偏見を取り除き、
逆転ホームランをかっ飛ばすには、この店にすがるしかない。
まさに切り札。頼んだぞ〜。
店主は、ぼくより、ちょっと年上。
久しぶりだったが、温かく迎えてくれた。
開店当時の失敗談で笑わせたり、ヘラの使い方を教えてくれたり。
「広島風」の素晴らしさをわかってほしくて、店主もぼくも語り続けた。
鉄板前のカウンターで、夜が熱く、熱く、ふけていった。
店主が席をはずしたとき、ぼくはささやいた。
「広島風の真髄は、鉄板を挟んで人情が交錯するところ。ほかの料理では、なかなか味わえないよ」
「そうね。いい人。いい店ね」
彼女が頷いた。
よっしゃ〜。ビールをもう
1 杯。
「初めてお会いした時も、お好み焼きをテーマにして5時間近くも話し込みましたよね。
でも、あっという間だったけど」
戻ってきた店主が笑った。
|