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とにかく、サテイを目指して来て――。
人懐っこい奥さんの声を頼りに、フェラーリ号をかっ飛ばした。
東の大通りから一本裏側。明るく、清潔な店だ。
壁に大きなポスター。嬌声が上がった。
「南一誠さん。大ファンなの。わたし、おっかけなの」
なぬ〜っ。
一誠さんといえば、広島の有名歌手。
「ハチカフェ」の
yuka ネエとは、ラジオのコンビでないかいな。
「人柄が素敵。ディナーショーの時は、東京でも九州でも行っちゃうの。
いつも一番前の席なのよ」奥さんは、きゃ〜、きゃ〜、はしゃいでる。そして、
「彼、ときどき食べに来てくれるの」頬を赤らめた。
なんと。
この店は、一誠さん御用達だったのだ……。
ガーリックが香るお好み焼き。
生地がうまい。太めのそばだ。
途中で、カレーパウダーを勧められた。
あいますがな。ベリー・グーですがな。
「だけど、あまり見かけませんね」
「気に入って、いつもかける人が多いですよ」
平成2年7月創業。わずか8席なのだが、10周年は中区のホテルで大々的に祝った。
常連さんが160人も集まったという。
「ホテル側も驚いていました。一番の思い出です」
よもやま話で、あっという間に時間がすぎる。ぼくはしぶしぶ席を立つ。
家庭的――。奥さんが、最初に言った意味がだんだんピンとくる。
お好み焼きのうまさも、雰囲気の良さも、じわじわ、じんわり効いてくるタイプの店なのだ。
だから、10年で160人を超す客の心をつかんだのだろう。
背筋がピンと伸びた奥さん。品が漂う。
「じつはソーシャルダンスが趣味なんです。
10周年の時には一誠さんも来てくれて、一緒に踊ったのよ」
夢見る少女の表情だった。
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